西鯖江・武生で静かなひととき ~街並みについて思うこと~

取材で今月2回目の福井。

前回は坂井市と福井市だったけれど、今回の取材先は鯖江市。

というわけで……

武生より福武線というワンマン電車の私鉄に乗車。

福武線は武生から福井駅前までを繋ぐ電車。ほぼ平行するようにJR北陸本線が走っているけれど、JRの普通列車は1時間に1~2本であるのにくらべ、福武線は15分に1本くらいで走っている。

地元のおばあちゃんや高校生が使う、まさに市民の足と呼べる電車。

さて、本日はこの福武線に乗り、西鯖江まで。

駅前の商店街でなんだか雰囲気のある建物とポストを発見。

駅のすぐそば。

なんてことはない町並みだけれど、昔ながらの建物が多くて街並みが落ち着いている。

さて、本日の取材先は西鯖江から徒歩20分。

ひたすら歩いて川を越え……

田んぼと畑と、澄んだ水が流れる用水路の先に、取材先の店舗があった。

車は多いのだけれど、空気が澄み渡っていてきれいで、歩いていて心地よい。

 

取材を終え、再び西鯖江駅に戻る。

帰りの切符は19時。

まだまだ時間があるので、おろしそばを食べに行くことに!

取材先のお店の方に、鯖江駅の近くに亀蔵という美味しいお蕎麦屋さんがある、と教えてもらったのだけれど、開店時間までまだだいぶある。

西鯖江の駅からほど近い道の駅をのぞいて鯖江のお菓子をチェックしてみたけれど、それでもまだ時間がある。

お腹もすいてきたので、いったん武生まで戻ることに。

さて、武生駅の改札を出て、左手にあるホテルを回るように右手に進むと……

こんなステキなお蕎麦屋さんがありました。

御清水庵。

外観から中の様子はうかがえず、おそるおそる扉を開けると、中には二組のお客様が。

大きな木をそのまま使った大人数が座ることができるテーブルに腰かけ、おろしそばを注文する。

こちらのメニューは蕎麦に特化したもので、ツマミも2種類くらいしかなかった。でもそこが、「本格的蕎麦店」っぽくてすてき!

 

さて、届いたこちらのおろしそば。

実は、食べ方にちょっと迷っていた。

蕎麦猪口に入ったおろし入りのそばつゆに蕎麦を付けてすすればいんだろうけど、私が初めて福井に来たときに食べたおろしそばは、3回連続くらいで全部ぶっかけだったから。

もしかして、ねぎと鰹節を蕎麦の上にかけて、その上にそばつゆをぶっかけて混ぜ混ぜして食べるのかな?

でも蕎麦猪口があるってことは、普通にざるそばを食べるように食べればいいのかな……?

と思いながら、ざるそば方式で食べ始めてみた。

こちらのお蕎麦はまさに手打ち、手で麺をカットしているので、不揃いなところがいい。

かなり腰がしっかりしているお蕎麦で、香りも強い。

そして刻み葱はおろしと和えたものだった!

というわけで、ネギもピリッと辛くて、それがいい。

そばつゆに入れられた大根も絡みが強く、まさに「おろしそばを食べてる」感たっぷり!

 

ところで食事中に夫婦がやってきて、私の向いに席を取った。

地元の夫婦らしきお二人が頼んだのもおろしそば。

どうやって食べるのが正解なんだろう、と見ていたら……

旦那さんはそばつゆをぶっかけて、奥さんは蕎麦猪口にそばを付けて、それぞれ違う方法で食べていた。

そうか、自分がやりたいようにやっていいのね!

 

ちなみに御清水庵さんでは、きなこもちがデザートとしてサービスで出してくれた。

これもとても美味しかった。

私がおろしそばを平らげる間にも、一組お客さんが帰ったらまた一組違うお客さんが来て、と回転率が良く、地元の方に人気のお店の様子。

いいお店を見つけることができて良かった……!

 

さて、お腹も膨れたところで、街を散策してみることに。

武生の街は日が暮れかけている。

 

古い建物が並ぶ住宅街の中に、「ちひろの生まれた家」を発見(営業は終了していたけれど……)

なんとあのいわさきちひろさんは武生の出身だった!

隣はお餅屋さん。

福井の街を歩いていると、お餅屋さんをよく見かける。

福井の人はお餅が好きなのかな?

 

暗くて分からないけれど、武生も昔ながらの家が多く残っていた。

以前友人からこんな話を聞いたことがある。

「欧米からある人が、日本の街を『魅力的ではない』と語っていた。日本らしい日本の街並みが残されていないから、と。それなら、と京都に行くように勧めたけれど、京都の街並みですら合格点をもらえなかった。昔ながらの家をドンドン壊して、ハウスメーカーが大量生産する30年くらいで建て替えなくてはいけない安い家が点在するためだ。まるでどこの国の家なのかもわからない家があるせいで、街並みに統一感がない」

確かに、その通りだと常々思う。

100年単位で家を保持し、大切に守ることを当然とする人々が暮らす街と、次々と立て替えていく家が多い街並みと……。

もちろん、日本は地震が多いからというのもあるんだろうけれど。

福井の街並みは、その古い住宅が大切に残されていて、リフォームをしている家も街並みの風情を壊さないように工夫しているようだった。

こんな街並みなら、欧米から来た人も満足するんじゃなないだろうか、と感じながら、どんどん暗さを増していく街を歩き回った。

 

さて。

こちら、武生の駅前商店街なんだけど……

これを見て「あれ、どこかで見たことある風景だな」と思った。

で、「あ、あれか!」と気づいたのが……

マレーシア、ペナン島ジョージタウンの街並み。

1階の商店街の前は屋根がついていて、雨や強い日差しをよけながら歩くことができ

その脇には路駐している車がたくさんあって……

という、まさにちょうど1年前に訪れた街並みと非常に似ている!

まあ、マレーシアのほうがずっとカラフルで、日本のほうがずっと整然としているんだけれどね。

マレーシアのこの通路はファイブ・フット・ウェイ(five-foot-way)と呼ばれるもので、イギリス統治時代に、玄関から5フィートを公共の通路にすること、という決まりがそのまま現在にも残っているもの。

確かに灼熱の日差しの下での散策のときはとても助かった。

福井のファイブ・フット・ウェイは雪避けかな……?

 

 

福井 越前蕎麦めぐりと芦原温泉で日帰り入浴!

さて、春江からJR北陸本線に乗り金沢方面へ進むと少し先に「芦原温泉」駅がある。

芦原温泉には複数の日帰り温泉を楽しめるところがあるのだけれど、実はJRの芦原温泉駅と、温泉が集中するエリアは5キロほど離れている。温泉に行くならえちぜん鉄道のあわら湯のまち駅を使うほうが便利。本当は。

まずは取材を終えてお腹がぺこぺこなので、温泉に向かう前に腹ごしらえをすることに。

目的はもちろん、越前そば(おろしそば)!

芦原温泉駅を出てすぐ左手にある風情のあるお店「しのぶ庭」に入ると、まだ17時過ぎだったからかお客さんは皆無。

お店の中はとても落ち着いた良い雰囲気で広い。

メニューもけっこう豊富。

席についておろしそばをオーダー。

出てきたお蕎麦はあっさりした風味で、大根もそれほど辛くないタイプだった。

とりあえず「福井でおろしそばを食べた」ということに満足し、次は日帰り温泉へ移動すべく、駅の観光案内を訪れると……

「これから(17時すぎから)1人で日帰り温泉に入るなら、公衆の温泉しかない」と言われてしまう。

事前にネットで調べたところ、あわら湯のまちの温泉旅館でも日帰り温泉をやっているところがたくさんあったはずだけれど……と問い合わせると

「それは、日帰り温泉手形っていう3枚つづりの手形を買う必要があるんです。でも今からだと1人で3ヵ所回るのは厳しいですから、手形なしで入れる温泉ってなると、公衆の温浴施設だけになってしまうんです」

と説明してくれた。

なるほど。

ちなみに手形が無くても入浴できるのは、

セントピアあわら

大江戸温泉物語あわら

芦原荘

セントピアあわらは数年前に行ったことがあるから今回は除外。ちなみにここは広くて現代的。そしてお湯がとても熱かった記憶が。

観光案内でそれぞれの特徴について聞いてみると

「セントピアは地元の人がよく行くところで、遅くまでやっています。大江戸温泉はショーをやったりもする大きな施設で、昔は有名なホテルだった場所です。芦原荘は宿泊施設なんですが、この中ではいちばんお風呂はこじんまりしています」

なるほど!

福井まで来て大江戸温泉もないよな、と思ったので、芦原荘に行くことに決定。アクセス方法を聞いてみると、駅前からバスかタクシーになるとのこと。

ちなみにバスは1時間に1本で、この後しばらく来ない様子なので、タクシーに乗ることに。

芦原温泉→あわら湯のまちまで、タクシー代約1,600円。

タクシーで移動中、あられ混じりの雨が降り出してタクシーの中がすごい音に!

運転手さん曰く「これがもっと大きなつぶになると、うるさくて話もできんです。福井ではよくあります。でも昔に比べると、雪が積もらなくなったねえ。雪が降っても、次の雪が降るまでの間が長いから、その間に溶けちゃって」

とのこと。

運転手さんの話だと、ドカ雪が降った年に収穫したお米はとても美味しいので、雪が少ないというのも「ちょっとな……」という感じらしい。

 

芦原荘の温泉は40度と43度の温度の違う内風呂が2つ。そして半露天が一つ。

けれど半露天もお湯の温度がかなり熱くて、あまりゆっくり浸かることが出来なかった。

しかしながら、お風呂に浸かっている間、一緒になったおばあちゃんとおしゃべりをするというサプライズな楽しみが。

おばあちゃんと話していたら娘さんが洗い場からやってきて「誰と話してるの?」とおばあちゃんに問うと……

「知らない人」

とおばあちゃん(笑)

ま、確かに知らない人だけれど。

芦原荘の温泉では源泉を飲むこともでき、大満足で温泉を後にする。

ちなみに芦原荘の目の前には、足湯が楽しめる「芦湯」がある。そして芦湯と駅の間には小さな屋台村が。4畳半ほどのスペースにバラエティ豊かな小さなお店が軒を連ねていたけれど、お腹の中はさっき食べたお蕎麦でまだいっぱい……

そんなわけで、屋台村には寄らずに、福井へ戻ることに。

 

女一人旅 福井の楽しみ方 蕎麦編

さて、翌日は蕎麦を食べて昼過ぎに変えることに。
朝目を覚ましたら、窓の外はうっすら雪化粧していた。

晴れ間が見えるけれど、天気予報だと雨が降るみたいだし、傘がないとツライなあ……。
そんなことを考えながらチェックアウトをしようとすると、私の傘が出てきた!

なんと「2階のバーのマスターが、お客様の忘れ物だと届けてくれました」とのこと!
ああ、このホテルに宿泊してるって、言っておいてよかった!

助かった!と傘を受け取り、まずは足羽山まで足を伸ばしてみることに。
足羽山には愛宕坂という雰囲気タップリの坂道があって、そこを上るだけでも情緒を味わえる。
4月の桜の頃にはたくさんのキャンドルが並んでライトアップされる風景もとてもステキなのだ!
ちなみに愛宕坂には茶道美術館橘曙覧記念文学館もあり、ここだけでもかなりの長い時間を過ごすことができる。

さて、坂と風情を味わったら、蕎麦を食べるぞ!
というわけで、愛宕坂の入り口に近い蕎楽 愛宕庵へ入ってみた。
こちらで注文したのは九頭竜産マイタケをつかったおろしそば!
やっぱり地元のものを食べたいものね~!

揚げたてアツアツのマイタケ天麩羅は本当に美味しくて、そしておろしそばもたいへん美味だった。

これだけでもけっこう満足したのだけれど、昨日バーのマスターに教えてもらった、片町のメインストリートにある「さのや」というお蕎麦屋さんも気になったので、はしごすることに!

片町に向かって歩いていると、こんなおしゃれな洋館を発見。

ここはグリフィス記念館というらしい。

なんでもむかし、福井からアメリカに留学した偉人の記念館だとかなんだとか……。

寒さをしのぐために。ちょっと中に入ってみる。

係り員がいなくて静かなので、なんだかまったりできた。観光中の一休みスポットとしても良いかも。

この建物の二階から外を見ると……

昨日の雪が残っている。

こんな感じでほとんど積もっていないけど。

さて、少しだけグリフィス記念館で休んだあとは、片町に戻ってさのやのお蕎麦を食べにいこう!

さのやは、川のほうから片町のメインストリートに入り、左側にある風情ある店構えの蕎麦やさん。

店内はそれほど広くはない。

おろしそば500円……か550円だった。

蕎麦は手打ちで麺の太さが不揃い、そしてこしが強いけれど、しっかり蕎麦の風味を感じることができる。

蕎麦だけでいったら、今回食べたどの蕎麦よりも、さのやの蕎麦が一番好きかも。

さて、食事を終えて店を出ると……

雪がすごい勢いで降ってきた!

ダウンやパンツに雪を積もらせながら駅まで戻り、しらさぎに乗って米原へ向かう途中……

すっかり真っ白!

雪景色も見ることができ、満足した取材旅行だった。

 

最後に。
福井の冬の風物詩、水ようかんを買ってみた。

千のマスターに教えてもらわなかったら、水ようかんは素通りしていたと思う。