キルギスへロシア語留学2 キルギスでの家探し

キルギスに到着して3日目。

この日は土曜日でしたが、私がお世話になるアラバエフ大学のオフィスを訪れました。

キルギスでアパートを探す

私はマンツーマンのレッスンを週4日、1日2コマ(50分×2コマ)受講します。

日本に5年住んでいたというトルゴナイ先生が私の先生。まだ24歳でとてもキュートです。そして、先生が私の部屋探しを手伝ってくれます。

キルギスでの部屋探しは、アプリを使うのだそう。

Lalafoというアプリを使って希望する条件を入力し、出てきた部屋をチェック。

気になる部屋があれば、部屋のオーナーまたはエージェント(不動産屋)の電話番号が表示されているので、そこに電話をかけて内見の申し込みをします。

お手頃価格の部屋から豪華マンションまで、さまざまな部屋が……! 住みたい場所や値段、ベッドルームの数などで検索できます。

家の詳細情報が記載されていますが、詳しく記載されている家とざっくりとしか記載されていない家とがあります。

キルギスでの部屋探しは、キルギス語またはロシア語ができなければお手上げなのです!

先生と一緒にアプリを見ながら「ここが安くてすてき」と気になる部屋を見つけ電話をかけると、出たのは不動産屋(エージェント)でした。

1000ソム払い、大家の連絡先を教えてもらうシステム

アプリに掲載されている部屋を見たいと伝えると、「1000ソム(約1600円)払えば、大家の連絡先が掲載されているグループチャットのようなものに招待する」と言われました……

日本ではありえないシステムなのですが、これがキルギス流なのか?

仕方ないので1000ソムを指定された口座に振り込んで、振込明細を写真に撮って送信したところ、テレグラムのグループチャットに招待され、そこに参加。

するとそこには、たくさんの住宅情報が掲載されていました。

こちらの情報には、各物件の詳細欄に大家(オーナー)の電話番号が掲載されているため、それを見て直接大家に電話をかけて「まだ部屋は空いてる? 内見できる?」と聞いて、住所を確認し訪問します。

ところが、この日が土曜日だったため、大家が電話に出ない……。

トルゴナイ先生の話によると、キルギスの人は休日は本当に休んでいてあまり電話に出ないことが多く、さらに知らない番号からの電話なので取らないのではないかということ。

さっさと部屋を決めたい私たちはよさそうなところに片っ端から電話をかけるのですが、ほとんどが電話に出ず、たまに出たところも「もう入居者が決まった」「先週から新しい住人が住んでるよ」とのことで、しょっぱなから部屋探しはとても難航したのです。

エージェントは「勝手に」エージェントになっている

これはあとから判明したのですが、Larafoは大家さんも借りたい人も、個人が自由に登録して使えるシステムです。

個人が「家を貸したい」と登録したときは、自分の電話番号を登録します。

なぜそこにエージェントなるものが登場するかというと、エージェントは勝手に個人が登録した住宅情報をコピーし、連絡先を自分に変えて登録しているから。

そういうことをしている人が複数いるので、同じ部屋なのにエージェントが違う登録がいくつも出てくるのです。

部屋を貸しに出して借主が決まれば、大家さんはLarafoの登録を削除します。しかしそれを知る由もないエージェントは物件情報を掲載しつづけるので、「すでに入居者が決まっている物件が多数掲載され続けている」状態になってしまうのです。

先生がテレグラムで見つけた物件の大家さんに電話したところ「私たちはLarafoで入居者を募集したけれど入居者が決まったから募集情報は非公開にしているのに、なぜ電話をしてきたの? どこでこの情報を見つけたの? エージェント? 私たちはエージェントになんて登録していないよ。エージェントが勝手にLarafoで見つけた情報を登録してるよ」と教えてくれたそう。

日本でこんなことをしたら問題になること間違いなしですが、それがまかり通るのが海外です。

古いアパートとエリートハウス(きれいなマンション)の2軒を内見に行く

キルギスだけでなく旧ソ連の各地に、このような古いアパートがたくさんあります。大通りに面しているアパートは、1階が店舗、2階以上や大通りに面していない側の1階は住居として使用されています。

その中で電話が通じ、見に来てもいいと言ってくれたのが、中心部に近いソ連時代のアパートの1階にある物件と、中心部から6キロほど離れたボタニカルガーデンの隣に立つ新しいマンションでした。

新築のエリートハウス。例えば東側の棟はまだ作っている最中だけれど、西側は完成している場合、そちらからどんどん入居していきます。建設中のように見えても、もう住民が住んでいるケースも多いです。

新しいマンションはエリートというシリーズで、日本でいうパークハイツとかライオンズマンションなどのブランド名と同じイメージのようです。

まずはアパートへGo。

建物自体は古くても、中がきれいにリフォームされていればいいと思っていたのですが、写真で見た印象とはだいぶ違う……。

写真ではヘリンボーンの床がとても素敵なクラシックな装飾の住宅に見えたのですが、実際に入ってみると床が波打ち、壁のペンキはすすけていて、トイレのタイルも古びていて「非常に渋い」印象。

玄関を入った瞬間「ここはちょっと……」と思いました。もし予約したホテルがこんな感じなら、1泊でチェックアウトしているでしょう。

 

そのままタクシーで2軒目のエリートハウスへ。

こちらはエリートハウスが建つ敷地内に入るにも警備員のいるゲートを潜る必要があり、セキュリティはバッチリ。

このお部屋は現在まだ住んでいる人がいて、退去予定の3日後以降から入居できるという条件。そのため、現在の入居者の許可を取って内見させてもらうという流れでした。

お部屋自体は新しくてきれいで申し分ないのですが、南西向きでエアコンがないことと窓の目の前で絶賛新しいマンション工事中で、景観が残念だったことからこちらも保留。

ビシュケクの夏の午後は気温40度を超えることもあるので、日差しがさんさんと降り注ぐだろう南西向きでエアコン無しはやっぱり厳しいです。

自分でエアコンをつけてもいいということでしたが、いまいちピンとこなかったのでもう少し探すことにしました。

どの部屋も「入居者決定済み」、日本人の感覚で「住める」部屋は…

翌日の日曜日もたぶん電話がつながらないだろうということで、ホテルでゆっくり過ごし、翌月曜日。

オフィスで先生と会い、さっそく部屋探しスタートです。

月曜日はやはり電話がつながる!……と思いきや、日本の大家さんとは違って、キルギスの大家さんは多くの人がオフィスワーカー。「仕事が終わって私が帰宅してから見に来て」という人が多くて、内見の予約が午後6時や7時……。

しかも、いいと思って電話をしても「入居者が決まりました」と言われる部屋が多く、「すごく効率が悪い……」と感じました。

日本なら不動産屋に問い合わせをした時点で、こちらの希望に近い物件を複数ピックアップしてくれ、だいたいどこもすぐに内見できて、数時間で5軒くらいの内見が出来たことを考えると雲泥の差です。

郷に入っては郷に従えと言いますが、さすがにこの効率の悪さには少し辟易し、そして日本の不動産システムの凄さを実感しました。

さて、この日は夕方から1軒のエリートハウスと2軒のソ連時代のアパートを内見。

最初に行ったエリートハウスは新築で、大家さんが自分で住もうと思って買ったけれどロシアに行くことになったので貸しに出す物件なのだそう。家具も全く入っておらず、新品のベッドや洗濯機をこれから入れてくれるというとても素敵な条件だったのですが、なにぶん中心部から遠い。

授業が行われるオフィスからバスで40分くらいはかかりそうな距離にあり、近くにスーパーはあるけれどカフェなどがなく、ちょっと気分を変えたいときに気軽に行ける場所がなさそう。

悪くないけれどちょっと……ということで、ソ連のアパートを見に行くことに。

次は日本でいう渋谷や六本木のような、非常に便利な立地にあるアパートの9階だったのですが、こちらもやはり建物も内装も非常に古い。レトロと言えばレトロで素敵なのですが、そこで暮らすイメージがつかない。さらに、巨大なブラウン管テレビをはじめとして、部屋にモノがとてもたくさんあるのが、ごちゃごちゃして好みではない……

2ベッドルームでとても広かったのですが、こちらもパス。

続けて雨が降り出した中、ビシュケク南寄りの中心部にあるベファというショッピングモールの裏手にあるアパート群の一室へ。

こちらはまさに日本の団地のように同じ建物が並んでいて、さらに1つの建物に複数の入り口があります。そして、どの入り口が目指す物件がある入り口なのかが分からないという事態が発生。住人の一人に「15番の入り口はどれですか」と聞いて教えてもらった入り口から中に入ると、真っ暗。

キルギスにあるソ連時代の古いアパートも比較的新しいマンションも、たいていが入ると真っ暗なのですが、建物の古さも相まってホラーみが強い。

さらに、エレベーターに乗るとボタンの脇に階数がマジックで手書きされているというありさま。

内心かなり引きながら目指す階に辿りつき、募集が出ていた物件の部屋の前まで行くと、男性の二人組が。

「君たちも部屋を見に来たの。僕たちもだよ。さっきオーナーに電話したら、勝手に入っていいって言ってた」

ということで、4人で内見。

日本だとちょっとない出来事ですが、キルギスでは普通で、部屋を見に来たほかの人とかちあうことがちょくちょくありました。

こちらも掃除はされているのだけれど、古さと渋さは隠しきれず…。

雨でびしょびしょに濡れた後での内見ということで気持ちもへこんでおり、「すごく便利な立地だけど、ここは違うな」と心の中で思いながら部屋を出ました。

廊下も階段も相変わらず真っ暗で、かなり怖い。

そのあとエレベーターに乗って1階を押した瞬間、エレベーターの電気が消えるというトラブルがあり、思わず「ヒッ!」と叫んでトルゴナイ先生と手を握り合うという一幕もありました。

この日、3軒見て

「旧ソ連時代のアパートは無理だ……。新しいエリートハウスじゃないと、住めない」

と実感。

ソ連時代のアパートは外から見ると非常にレトロで味わいがあって憧れがあり、住みたいと思っていました。

けれど、日本の住宅のようなリフォームはされていないところが多く、お部屋はリフォームされていても水回り(バスルーム、トイレ)は置き去りというケースがいくつか見られ、「ちょっと、ここに住むのは……」と感じました。

また、室内を歩いて感じたのが、床が波打っていて、ぼこぼこしている住宅も多く、安心感がないというのも理由のひとつ。

日本では築30年を超えるアパートに住んだことも多いのですが、多くがきれいにリフォームされ、特に水回りは新しくなっていることが多かったため、それを「普通」として暮らしてきた私には、旧ソ連のアパートはハードモードでした。

新しいマンションはすべてが新築ではありませんが築年数が浅いものが多く、水回りをはじめすべてがきれい。特にお風呂でゆっくりしたい日本人には、新しいマンションでなければ厳しいのではないかと感じました。

キルギスのアパート・マンションの“入り口”事情

今回の部屋探しでいろいろなアパートやマンションを見て知ったのですが、こちらの集合住宅の“入り口(エントランス)”って、日本とは全然違うんです。

日本だと、その建物に住んでいる住民全員が同じエントランスを使いますが、キルギスにあるアパート・マンションは、建物を縦に細かく分け、「この縦エリアの住民用の入り口とエレベーター」になっていて、同じ建物に住んでいても「縦エリア」が違うと、そこに行くためにはいったん建物を出てエントランスを入り直さないといけないのです。

建物によっても違うのでしょうが、だいたい1つの「縦エリア」は新しいマンションで各階5部屋前後、ソ連時代のアパートで2部屋~10部屋以下の様子。

エレベーターを降りると、その階には玄関の扉が5つくらいしかないわけです。

また、旧ソ連時代のアパートも新しいマンションも、各エントランスへ入室する扉は住民が持つ「チップ」で開錠します。さらに、新しいマンションはエレベーターの昇降操作にも「チップ」が必要。エントランスへの入室およびエレベーター操作は住民しかできない仕組みなのです。

セキュリティは日本よりずっと優れているように感じますが、各戸の玄関には最低2つの鍵が設置されており、ドアを開けるともう一つドアがあって、そのドアも開錠しないと入室できないという家も。

泥棒が多いとも聞いているので、皆さんさまざまな方法で家を守っているのですね。

ようやく家が決まる

月曜日も家が決まらず、火曜日にまた電話をかけて内見をするという流れに。

「今日こそ家を決めたい!」という私に、トルゴナイ先生は「おそらく古いアパートはダメですよね。エリートハウスに絞って見ましょう」と提案。私も同じことを考えていました。

エリートハウスはパークハイツやライオンズマンションのようなマンションのブランド名なのですが、キルギスのマンションにはもう一つ、インディペンデントというブランドもあって、こちらもとてもいいマンションだとのこと。そこで、Larafoでエリートハウスとインディペンデントに絞って検索したところ、インディペンデントで登録された新しい物件が。キッチンの写真1枚しかないのだけれど、なんだかきれいそう。

トルゴナイ先生にLarafoの物件情報を見せて電話してもらうと、なんと先生のアパートの向かいなのだそう。すぐ近くに知っている人がいれば何かあっても安心です。

さっそく家を見に行くと、インディペンデントで登録されていたけれど、古いソ連のアパート……。1階がスーパーなので買い物は便利だけれど、ソ連のアパートか……と、ちょっと警戒します。

室内はきれいだったけれど、にぎやかな立地ということもあり、少しうるさいかな……ということでこちらも見送り。

その後、もう1軒、南の少し外れたところにあるエリートハウスを見に行ったところ、タッチの差で入居者が決まり、結局内見はせずにもう一つの物件へ。

こちらもエリートハウスで場所はアジアモール(中心に近い場所)の近く。

実はこの物件、朝いちばんに電話した物件で、大家さんに「午後4時以降に来て」と言われており、先生は「この大家さんいい感じ。ここがいいかも」と朝から言っていたんです。

こちらの物件は、13階建ての建物が2つのコの字型を作る巨大なマンション群の一室。

室内に入るととてもきれいで、大家さん自身まだ少ししか住んでいないのだけれど、息子の結婚式でお金が必要になったため貸しに出したのだそう。

「きれいに使ってくれる人に貸したい」

と言っていて、先生は「彼女は日本人ですから、とってもきれいに使ってくれますよ」と強く推してくれます。

窓から南にそびえる山とマンションの隣のボタニカルガーデンが見えること、室内がとてもきれいでバスタブもあり、水回りも文句なしだったことから「ここを借りたい」と大家さんに伝えると、家賃が5万ソム(約7万7,000円)とのこと。

日本でこのクオリティならそれでも安すぎるくらいですが、ここはキルギス。

一般人の月給が約200ドル(約25,000円)、単身用の1ベッドルームのそこそこいい部屋が、2022年夏までは月300ドル(約4万円)で借りられた国です。今は家賃が上がってるとはいえ、それはちょっと高い。

難色を示した私を見て、先生が交渉を重ねたところ、なんと家賃を4万ソム(約62,000円)まで値下げしてくれました。家賃が20%も値下がりするなんて、すごい!!

入居の条件は、デポジット(敷金のようなもの)が4万ソム、プラス3か月分の家賃を前納すること。それをドルでほしいのだそう。

その条件でOKし、手付金の3,000ソムを渡して予約完了しました。

後で先生が教えてくれたのですが、私たちが来る前にIT関係の仕事をしている男性2人がやってきて、大家さん言い値の5万ソムで借りたいという申し込みがあったのだそう。けれど大家さんは「後で日本人の女性が来ると言っていたし、きれいに使ってくれる人がいい」と考え、断ったのだそうです。

まさに運命的とも言えるお部屋との出会い。

入居は3日後。
ようやく部屋が決まって、心からホッとしました。

キルギスでの部屋探しについて

キルギスでの部屋探し、私はLarafoというローカル向けのアプリを使いましたが、これにはキルギス語またはロシア語が必須です。また、地元の人たちはテレグラムのグループで部屋を探すようで、こちらを利用すると大家さんと直接つながれます(不動産屋、仲介業者に手数料を取られずに済みます)。

いずれにせよ、地元の人の助けがないとかなり厳しいのがキルギスの部屋探し。

それから、ロシア語やキルギス語が解っていても、その街に詳しい人でないと厳しいとも感じました。

まずはキルギスに来て地元で生まれ育った友達を作り、その人にヘルプを頼むのが一番いいと感じました。