イスラム教の戒律が特に厳しい国イランを旅行中に、ラマダン(断食月)が始まりました。
ラマダンが始まるのは新月から。2019年は5月6日からスタートします。
旅行中であったイランの人々に「ラマダンが始まりますね」というと、みんな不思議そうな顔。
「ほら、食べなくて、飲まなくて……」と説明すると
「ああ、ラマザンね!」
と。
どうやらラマダンよりラマザンのほうが発音が近いらしいです(笑)。
「ストイックなイスラム教徒以外はこっそり飲食してる」
ラマダンが始まる前、親しくなったイラン人に「もうすぐラマザンになるけど、あなたも食べないし飲まないんでしょう?」と聞いてみたところ
「外では飲食しないけれど、家では飲むし食べるよ」
という返事が。
ビックリして
「あれ、あなたはムスリム(イスラム教徒)じゃなかった?」と聞いたところ
「ムスリムだけど、本当に食べない、飲まないって厳粛にやるのはストイックな人達。そうでない人は、人目がない自宅では飲んだり食べたりするよ」
という驚きの返事が……!
まさかの「実は断食月中でも飲食する」という返事は衝撃でした。
それを証明するかのように、ラマダンの日の午後訪れたとあるイラン人のご家庭では、私に紅茶を出してくれて、そしてご自分たちも、紅茶を飲まれていました(笑)
確かにね。
暑いものね。
水分欲しくなるよね。
私も「この暑さで水分取らなかったら、熱中症になっちゃう」と思ったもの……!
けれど、厳粛なイスラム教徒が多い(と思っていた)イランで、実は飲食している人が多いというのは衝撃でした。
さらに、チャーターしたタクシードライバーは運転中ひっきりなしにナッツを食べていて(イラン人はナッツが大好き)、ツアーの最中に入ったレストランでは一緒に普通に食事をしました。
正直「私だけ食べていて、彼が食べずに待っていたら気詰まりだ」と思っていたので、こちらとしては助かったというのが本音。
一緒にツアーに参加していたポルトガル人女性が「今はラマダンでしょ?」と水をむけると、ドライバーは
「でも今はヤズドにはいない(ヤズドから他の町へ向かうツアーだった)。ヤズドから離れているから、ラマダンも関係ない」
とのこと!
このポルトガル人女性は国連の仕事をしているため、世界各国を訪問しているそうですが
「イランは特にゆるい国。アフリカ北部の国々はもっと厳しくて、絶対にラマダン中は食べないし飲まないわ」
とのことだったので、イランはちょっと特別なムスリム国家のようです。
実際、ラマダン中でも公園でピクニックをしている人達はいたし(さすがにラマダン前より少ないけど)、野外でサンドイッチを食べている人もいました。
ただ、あまり目立つと警官に声をかけられるようなので、(本人たちからすると)目立たないように飲食しているようです。
ラマダンでは、多くのレストランはクローズ。カフェも閑散としている
けれど、ラマダン中の昼間のレストランはほぼクローズ。
レストラン以外のお店も閉まっているお店が多いように感じました。
街中のカフェには閑散としていて(いつもはたくさんのイラニアンがお茶を楽しんでいる)明らかに外国人だと思われる人しかいません。
私もラマダン初日、2軒のカフェに入りましたが、1軒目の客は私一人だけ。
2軒目はフランス人のご夫婦と私だけでした。
その後、シーラーズのレストランではイラン人だと思われる少年たちが水煙草を楽しんでいたり、ドリンクを飲みに来たイラン人女子がいましたが、ガッツリ食べている人は少ないようです。
赤ちゃんを連れたファミリーが私の隣の席に座りましたが、授乳中のママさんがお水を少し飲んだだけで、他の家族は何も食べず、少し休憩して出ていきました。
てっきりレストランに入ったから食事をするものだと思っていた私はびっくり。
けれど、こうして「休憩」させてくれるお店の懐の深さがいいですよね!
ラマダン中、イラン人は公共の場では(基本的に)昼間は飲食しませんが、観光客は食べても大丈夫。ただし空いているレストランがほとんどないので、ホテルのレストランを利用するのがベターなようです。
特に金曜日はほとんどの店が閉まっています。
夜間(午後8時以降)はローカルレストランもオープンしますが、今度はムスリムたち(イランの人達)が一斉にレストランに来るので非常に混雑し、なかなか頼んだものが届かなくなるそう。
ラマダン中にイスラム圏を旅行するということにかなりビビっていましたが、「本当のイスラム社会の顔」を見ることができた良い経験でした。