さて、移動と仕事が続いてゆっくりこちらのブログを更新する機会がなくて
いきなりイランに入国してからの記事になります。
皆さん、イランという国に対してどんなイメージを持っていますか?
「怖そう」
「危険」
「行ってはいけない」
たぶん、そんな感じですよね。
私もそうでした。
でも、実際にイランに来た私が断言します。
イランは、安全で最高に素敵な国です!!
イランが危険な国だと思われている理由
イランはアメリカと仲が悪くて、アメリカから経済制裁を受けています。
そのため、日本からはイランに送金できませんし、イランから輸入しているものは
ほとんどありません。ドライイチジクとじゅうたんくらい。
また、「歌舞伎町でイラン人が麻薬を売ってる」などの怖い話も一時期まことしやかにささやかれていたので(どこまで本当だかは分かりません)よけい怖いイメージなのかもしれません。
私は20年前に読んだとある小説がきっかけで、ずーっとイランに行きたいと思い続けてきました。
けれど、当時の私も、イランイラク戦争が印象に残っていたので「危険な国」という印象があり
「いつか行きたい。でも今はまだ危なさそうだから、安全になったら行こう」
と考えていました(そんなこんなしているうちに20年経ってしまいました)。
その後、世界中を旅している人達と知り合いました。
「イランに行ったことありますか? どんな国でしたか?」
と聞くと、イラン渡航経験者は全員口をそろえて
「すっごく良かったよ!」
と答えました。
イランを旅したことがあるという、ある人はこんな風に私に語ってくれました。
「イランは全然怖い国じゃなかった。特に田舎の人達は涙が出るほど素朴だったよ」
その言葉がずっと忘れられずにいて、ネットでイランに旅行をした人達のブログを読んで「大丈夫みたいだ、行ってみよう」と決意し、今回の渡航に至りました。
けれど、イラン旅行を決めた後、数名の友人たちに「イランに行くことにした」と話すと、口をそろえて
「大丈夫?」
「危ないよ」
と言われました。
テロリストの存在や、イスラム教徒を対象にしたテロが起こったこともその原因だったかもしれません。
私はマレーシアからドバイ経由でイランに入国しましたが、マレーシアでも「イランに行く」とホテルで出会ったマレーシア人に話したところ
「大丈夫か、マレーシア人だってイランにはいかないぞ」
と言われました。
「イランもマレーシアもイスラム圏の国なのに!」
と驚くと
「でも、行かない。危険だから。気を付けてね」
と思いっきり心配されました。
若干の不安を感じましたが、でももうイラン行きのチケットは取ってあるし、旅の前半のホテルも予約済。今さらキャンセルできない。
そんな思いで、飛行機に乗ったのです。
イランへの印象が変わった最初の瞬間は入国審査
マレーシアからドバイへ、そしてドバイからテヘランへ。
ドバイ発のエミレーツは激空きで、ビックリするくらいガラガラでした。
約2時間のフライトの後、テヘランへ到着。入国審査の列もそれほど長くありません。
外人用の長い列の最後の方に並んでいたのですが、イラン人の入国が終わると、イラン人用の窓口でも外国人の入国を受け付け始めました。
イランに入国するにはビザが必要で、そのビザの取得も実はけっこう面倒でした。
入国審査もけっこう時間がかかっているようで、不安を感じながら列に並んでいました。
私が並んでいた列が全然進まなくて、背伸びしてみると、1人の男の子のところでずっと止まっていました。
アジア人に見えるけど……日本人かな?
そのうち、他の列が短くなってきたので、隣の列に移動。
そちらはサクサクと進みまもなく私の番に。
ドキドキしながらパスポートを出すと、明るい茶色の髪をした男性の係員が私の顔を見て
「ニイハオ。……Oh, ジャポン!」
と。
びっくりしました。
入国審査で、挨拶されたのなんて初めて!
私のパスポートとビザをサラッと見て、あっさり通貨。
最後はにっこり笑いかけてくれました。
ええ、こんなにフレンドリーな雰囲気の入国審査、初めてなんだけど!
見返りを求めない親切なイラン人
かなり驚きながらスーツケースをピックアップし、出口を通過。
空港からの移動もかなり心配だったので、宿泊するホステルに送迎を頼んでいたのですが、すぐに私を待っていた男性を見つけることができました。
「いらっしゃい」
と笑顔で出迎えてくれたドライバーさんにスーツケースを手渡し、2階に上がるエレベーターを登り始めたところで
「あ!」
と私。
イランで使えるSIMが欲しいんだった(なにせ、2週間も滞在するので)。
そこで彼に「イランのSIMを買いたい」と告げると「SIMを売ってるのは1階だよ!」と。
そこでまた1回(出口のそば)に戻ると、紫と黄色、2種類の通信会社のカウンターが。
彼はまっすぐに紫(Ringtell)へ向かい、ペルシャ語で受付のお姉さんに話しかけます。
そこでまた私
「あ!」
まだ両替していないから、イランリアルを持ってない!
それを彼に告げると
「ドルでも大丈夫だけど、ちょっと待って」
とお姉さんになにごとか話しかけ
「でも、リアルで払ったほうがお得。両替は2階にあるから、リアルに両替しておいで、ここで待ってるから」
と。
ドライバーさん、親切だ……
お礼を言って、2階に上がるとすぐに両替所がありました。
空港の両替所って、だいたいレート悪いからなな、と思いながら、ドバイでキャッシングした財布の中のディルハムから1万2000円分だけをイランリアルに交換。
また1階に引き返して無事にシムカードを購入し、ドライバーさんと一緒に空港を出ます。すると、空港の外で車に乗っていた一人の男性が、運転席からスーツケースを引きずるドライバーさんに声をかけました。
恐らくタクシーの客引き。
でも、ドライバーさんも車で来てるから、用はない!と思っていたのですが、彼と少し会話をしたあと、なんと、ドライバーさんは車のトランクを開けて私のスーツケースを放り込み、「乗って乗って!」と一緒にそのタクシーに乗り込みます。
え、え!?
驚きつつもタクシーに乗ると、タクシーは近くの路上駐車している車がたくさんあるエリアへ。
少し走ったあと、1台の車の前で止まり、ドライバーさんがさっさとタクシーを降りて私のスーツケースをトランクから取り出しました。
あ、ドライバーさんの車のところまで、タクシーを使ったのか(すごく近い距離だったけど)
と思いつつ、タクシー料金は……
と思っていると、私たちを下ろしたタクシーはそのまま走り去っていって……
えええ???????
あのタクシー、ただ、私たちを車のそばまで送ってくれたってこと?無料で!?
なに、こんな親切、見たことなんだけど!
でも、送ってもらったドライバーさんはまったく気にする様子もなく、今度はドライバーさんの車にスーツケースを押し込み、私に「さあ、乗って」と。
驚きが冷めやらぬまま、私たちは金曜日の夕方の、かなり混雑する道を一路テヘラン中心部のホステルへと向かったのです。
イランの地下鉄で。日本の電車の社内とは全然違う一幕
翌日、地下鉄を使ってテヘラン市内を観光したのですが、その時にも驚く出来事がありました。
海外の地下鉄に乗るのは、ルールが分からないから怖い。
しかも、文字が全然違うからそういう不安もある。
そんな中、ホステルのママさんが「私も買い物の用事があるから」と私と一緒に地下鉄に乗ってくれて、
「あなたはバザールへ行くから、6つ目で降りるのよ」
「電車が止まると、ドアが開く前に、駅名をアナウンスするから良く聞いて」
「一番前と後ろの車両は女性専用。でも、それ以外の車両に乗ってもいいのよ」
など、細々したことを教えてくれました。
私たちは女性専用車両ではなく、真ん中へんの男性も乗る車両に乗っていました。車内はかなり混んでいたので、ママさんが3つ目の駅で降りたあと、私は日本の電車でよくやるように入り口付近にたまらず、車両の奥の方に入ったのです。
すると……
私の前に座っていた男性が、私が前にたったとたん、さっと席を立って譲ってくれたのです!
すごく驚いたのですが、遠慮する言葉も出てこず、ひたすら恐縮しながら親切をありがたく受け取って席に座ったのですが……
見ていると、少し離れた席でも、1人の男性が近くにいた初老の男性に席を譲っていました。
さらに、具合が悪い人がいたのか、入り口付近の人の中からそれを知らせるような声がすると、みんなが一斉に席を立って「ここに座りなよ!」というような言動をしたのです。
ひたすらびっくり……
だって、日本の電車じゃ
近くにヨボヨボのじいさんばあさんがいたって、気づかないふりで座ったままの人とか
明らかに気づいているのに無視する人とかがいっぱいで
むしろ、それが珍しくない光景なのに
イランじゃ、率先して困っている人や女性に親切にしてくれる!
迷うような、躊躇するような間もなく
条件反射みたいに、親切にすることが当たり前になってる!
私は、イラン人たちの優しさとピュアさに触れて
同時に、情けなさすぎる日本の現状を改めて思い知り
メトロの車内で、もう少しで泣きそうになっていました。
その後、テヘランのバザールを見学して周辺を散策していると、明らかに外国人だと分かる私に幾人もの人が
「どこに行くの?」
「何か手伝う?」
と声をかけてくれました。
ある人に「ここに行きたいんだけど」と地図を見せたら、それが分からなかったようで、彼はすぐに近くの店に入って、お店の人に、私のかわりに聞いてくれて、英語で教えてくれました。
バザールの中でトイレに行きたくなったけれど場所が分からなかったとき、近くのお店の店員さん(といっても、1つの店舗にだいたい店員さんは1人だけ、だからオーナーさんかも)に
「トイレ、どこ?」
と聞くと、わざわざお店を出て、近くまで連れて行ってくれました(実は、1回でたどり着けなくて、複数の人に聞いたのですが、多くの人が自分の店を離れて、分かるであろうところまで連れて行ってくれました)。
この後も他の町で、こんなふうな親切を何度も何度もしてもらいました。
いままで、いろいろな国に行ったけれど
こんなに人が、親切に接してくれた国はイランが初めてです。
親切な人の率が高すぎて、もうそれがショックでした。
私たちが今までイランに対して抱いていたイメージって、なに?
イランは、全然危険じゃない。
むしろ、信じられないくらい親切な人だらけの、ハートフルな国。
今、こうして記事を書いているときも
イラニアンたちにしてもらった見返りを全く求めない、純粋な親切を思い出して泣きそうになっています。
イラン、ヤバい。
イランにいると、私自身の汚れも洗い流されていくようだ……