イランに行ったら絶対に行きたかったのが「砂漠」。
イランには砂漠がたくさんあり、5000円くらいで砂漠に行くツアーがあると聞いていたのです。
宿泊先のホステル「ナーシスB&B」のオーナー、ナーシスに「砂漠に行くツアー、ある?」と聞いてみたところ、エスファハンから車で1時間ほどの場所にヴァルザネという町があり、そこが砂漠だとのこと。
45ユーロで砂漠1泊ツアーがあるとのことだったので、申し込んでみました!
オーナーの友人がツアーガイド!
翌日の朝、迎えに来てくれたのは、ナーシスの友人だというアミンという男性。
設計士で公園のデザインをしたり、オブジェを作ったりするかたわらツアーガイドも引き受けているとのことでした。
アミンはドイツ人とイラン人のハーフ。「英語はあまり得意じゃない」とのこと。それは私も同じなので、かえって気楽に過ごすことができました!
この時にはイランもイランの人々もすっかり大好きになっていたので「イラン人はとてもフレンドリーで素晴らしいね」という話をしたのですが、アミンも「ドイツにも住んだことがあるけれど、イラン人の方がハッピー。僕はイランが居心地よい」とのこと。
この「イラン人はハッピー」という言葉が本当に、私が肌で味わったイランにぴったりで、「確かに!」と何度も思いました。
彼はとても素晴らしい人で、おしゃべりも楽しくて、アミンのおかげで最初から最後までヴァルザネツアーをとても楽しむことができました。
アミンにツアーを依頼したい人はこちらから。
歌で牛に指示を出すおじさん
砂漠に向かう前に立ち寄ったのが、とある農家。
砂漠に近い、乾燥した大地の中にある1軒の家なのですが、家をぐるりと取り囲む壁の向こうは農地だそう。
ところで、農作物を育てるためには水が必要です。
用水路を使い畑に水を流しているそうなのですが、実はこの用水路の水、水道の蛇口をひねって「ジャー」ではなく、井戸からくみ上げているのだろう。
けれど、井戸から何度も水をくみ上げるのは大変です。
そこで活躍しているのが、牛!
おじいさんがやってきて、牛の背中にあるコブにロープを巻き付けます。ロープの反対側は井戸の中の袋につながっていて、ロープを引くと水が入った袋が引き上げられ、井戸から袋が上がったところで、用水路にその水が流れるしくみです。
この、「牛にひかせる」のは、なんとおじいさんの「歌」。
おじいさんが歌い出すと、牛は井戸に背を向けて歩き出し、歌の調子が変わると井戸に向かって戻ってきます。
おじいさんが歌う通りに、牛があっちにいったりこっちに行ったりするんです。
これはすごい!
ちはみに、歌う人が変わると、同じような調子で歌っても牛は動きません。おじいさんの歌にしか反応しないのです。
こんなシステム、初めて見ました!
井戸の水をくみ上げる牛は大変だと思うけれど、でも、日本の畜産工場で閉じ込められて薬をうたれている牛に比べたら、すごく幸せなんだろうなあ、なんて考えが頭をよぎったりもしました……
イランはほんとうに、いい意味で近代化していない部分がたくさんあって、日本人の私たちが置き去りにしてしまった「素晴らしいもの」が当たり前に残っています。
おじいさんが紅茶をご馳走してくれましたが、ゆっくり飲んでいたらいつのまにか紅茶の中でかなり大きなハエが溺死していて、いろんな意味で田舎を感じました……
このおじいさん、豆を使った占いもしてくれるとのこと。
「占いは大丈夫」と断ってしまったのですが、今は占ってもらえば良かったなあと思います。
もしまた行く機会があれば、今度は占ってもらおう!
ヴァルザネ砂漠
途中、売店でアイスクリームを食べたりしつつ、向かうのはヴァルザネ砂漠!
緑豊かなエスファハンの街を抜け、郊外の荒涼とした土地を真っ直ぐに抜けていくと……
砂漠が!!!
砂漠、初体験です!
4WDに乗ってすごいスピードで砂丘を駆け上るモーターツアーなんかもあったのですが、私はそういう危ないのは避けたいので……
ラクダに乗ってみましたー!
そうそう、この写真で私が来ているトップスはエスファハンのお店で買ったもの。日本円で約500円ですが、シワになりにくくてとても重宝しました。
日本に帰ってきてからもたまに来て歩いてるのですが、エレベーターで一緒になった人から「その服、かわいいね」なんて言ってもらえることもあって、ホクホクです♪
いい買い物した!
ラクダは、500Mくらい歩いて終わりというとても単純なものですが、「砂漠でラクダに乗っている」というロマンが味わえたので、問題ありません!!!
ヴァルザネの街を訪れる
砂漠の後は、ヴァルザネの街まで向かいました。
ヴァルザネは小さな町で、白いチャドルを着ている女性が多いのが特徴です。
こんな、土と素朴なれんがで作られた家が並んでいます。
私はいろんなモスクが見たかったので、アミンに「モスクに行きたい」とリクエスト。
ヴァルザネのモスクに立ち寄ってみました。
ミナレットとエイヴァーンがあるのは、どの町でも同じ。
ですが、青いタイルが途中までしか張られていなくて、とても素朴なモスクです。
たくさんのペルシャ絨毯が積まれて……というか、無造作に置かれています。
この日は、2019年5月4日。
この年は5月6日からラマダン(断食月)が始まるため、その準備をしているのだそう。
モスクの中には、こんな石がたくさん置かれた場所が。
この石にはそれぞれ、イスラム教の偉い人の名前が書かれていて、お祈りをする際に床に置き、石に額を付けるのだそうです。
宗教が人々の暮らしにとても近く、当たり前のものとしてそこにあることに、感動すらおぼえます。
エイヴァーンの天井は茶色いままでしたが、それ以外の部分にはタイルが貼られていました。
やっぱり素朴さも感じるけれど、改めて見ると本当に細かいモザイクです。
ヴァルザネの「鳥の家」
さて、ヴァルザネの町でもひときわ目立つのが、大きな円柱形の建物。
これは夜、遠くから撮影したのですが、こんな不思議な建物がときどき立っています。
じつはこれ、「鳥の家」。
壁には鳥が入れるように穴が空いていて、鳥たちが中で休めるようになっているのだそう。
なぜこんなものを作ったかというと、畑にまく飼料を集めるため。
そう、鳥の家の内側は、鳥が落としたフンを集める格好の場所なんです!
イラン人、かしこい!!!
と驚くところなのですが、ヴァルザネの町の入り口にある「鳥の家」は、今は違う用途で使われているとのことで、中に入れてもらいました。
これが、鳥の家の内部。
え、なに!?
って思うでしょ。
アンティークショップになっているんです!
鳥の家の内部に、所狭しと飾られた、さまざまなアンティークの数々!
店番の少年はお喋りが大好き。
アミンに一生懸命語り掛けていました。
彼が手にしているのは、イランの伝統的な太鼓。
彼は、太鼓をたたきながら歌を聞かせてくれました。
天井を見上げてみると、鳥が休む穴がたくさん。
かなりしっかりした石造りの建物です。
下を見下ろすとこんな感じ。
けっこう高さがあります!
階段を上った先は外に出られるようになっていて、ヴァルザネの町が見渡せます。
上から見たヴァルザネ。
けっこう広い……!
Chapaker Guest Houseで1泊
この日、宿泊したのは、「Chapaker Guest House」(チャパカーゲストハウス)というホテル。45ユーロの中に宿代も含まれています。
こじんまりしたトラディショナルハウスで、オーナー(おじいちゃん)とその息子のパパ、さらにその息子さん(おそらく20代前半くらい)?の3人で経営している様子。
息子さんがとてもフレンドリーでピュアな人で、興味津々にたくさん話かけて来てくれました。ちなみに皆さん、英語はペラペラです。
中庭のベンチで紅茶をいただいたあと、案内されたお部屋はこちら。
ベッド1つでもういっぱい!というこじんまりしたお部屋でした。
中庭に面した小さな窓が1つだけあります。
トイレは共同ですが、シャワールーム付き!
お食事はこちら。
米とナンと、豆の煮たのと、カレー的な何か。全てベジタリアン仕様です。
それから、とてもすっぱいヨーグルトドリンク。
かなりお腹いっぱいになります。
どこの国かは忘れてしまったけれど、ヨーロッパから来たという4人の旅行者も一緒に、皆でお食事。
食事の後は、ホテルの屋上に皆で上がって、天体観測をしました!
パパさんが「あそこに見えるのが○○座で……」と説明してくれます。
「砂漠の夜は寒いかな」と思いましたが、厚手のパーカーを羽織っていれば全然大丈夫なくらいの温度。
心地よかったです。
ゲストハウス近辺も一人で散策したのですが、まず、人が全然いない!
家の中にはいるのだろうけれど、外に出ている人がいない!という、ほんとうにいい意味で「田舎」。
夜でしたが、まったく危険な感じもなく、そして開いている商店なんかもほとんどなくて、「イランの田舎」をじっくり味わうことができました。
エスファハンへ戻る途中の、廃村?見学
翌朝、朝食を食べた後エスファハンへ戻ることに。
車の中から、見えたたくさんの「鳥の塔」。
現役で今でも活躍しているやつかも……
ヴァルザネの町から15分ほど車を走らせたあと、到着したのは、巨大な壁がそびえる建物。
「ここは?」
と聞くと、古い城塞だそう!
円柱の柱には見張り用の穴が開いているのが分かります。
なんとこの日、この城塞の近くで撮影が行われていました。映画かドラマかは分からないのですが、イランは映画大国でもあるので、もしかしたら映画かも!
城塞の周りをぐるりと回ると、内側はなんと町になっていて、観光客も中に入ることができます。
舗装されていない、土のままの通路と、土で作られた雰囲気満点の壁!
ところが、人の気配はなく……
人の気配がないどころか
崩れ落ちているところもある、廃墟でした!
廃墟といっても、日本にある廃墟のようにじめっとしたオバケが出てきそうな感じはなく、
ひたすら乾燥しているからか、「遺跡」にいるような感じ。
家の中ものぞきましたが、どの家も中には何もなくて、ごみのひとつも落ちていません。
まるで映画の中に入ったかのような、なんともいえない気分……!
1軒の家に入ると、二階へ上がる階段があったので登ってみました。
ドーム状の屋根が並びます。
どこかに人が住んでいても不思議じゃないけど……人の気配ありません。
イラン、ヴァルザネ郊外。今はほとんど人が住んでいない古い町。町の周囲は城壁?みたいな高い壁で囲まれている。 pic.twitter.com/13xBV9FTvm
— noire📝菅野りえ (@noi11313) December 15, 2019
けれど、私たちのように観光で訪れたり、先ほど外の通りで見かけた人々のように撮影にくる人もいるからか、なんと通路を歩いていると、トイレを発見。
入って出てきたところ、なんと……
イランのヴァルザネにあるほぼ廃墟となった古い町を散策している途中。トイレから出たら、散歩中の羊の群れに遭遇。突然現れた私に驚いた羊たちが走り出し、飼い主の男性がのんびり後を追っていった(ちょっと声入り) pic.twitter.com/TSe9odVVCq
— noire📝菅野りえ (@noi11313) November 17, 2019
羊たちが散歩中だったようで、突然トイレから出てきた私にびっくりして走り出す、という驚きの光景に遭遇。
飼い主さんもいました。
アミンに聞いてみると、この街は完全な廃墟ではなく、いまでも数家族が住んでいるそう。
町を出るときに振り返ると……
壁は土だけれど、扉は鉄。つい最近まで人が住んでいたか、いまでも住んでいるってことか!
そして電線が走り、電気が通じているのが分かります。
廃墟なんて言ってごめんなさい!
ほとんど人がいなくなった古い町。
そこに今でも住み続けるのは、どんな人達なのか……
すごく気になります。