たまごって高い?安い? 食から社会を考える

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とっても美味しい手作りカリカリ梅
先日友人から「カリカリ梅」をもらいました。手作りのカリカリ梅です。
庭に梅の木があり、梅の実がたくさん取れるのでカリカリ梅を作るのだと話してくれました。

梅干しを作る人は時々いますが、カリカリ梅を作る人は初めてで、どうやって作るのかと聞いてみたところ

「玉子の殻を使うんです。でもそのままではだめで、殻の内側の薄皮を剥いて使います」

と教えてくれました。

「玉子の殻の薄皮をはがすのって、大変ではありませんか?」

とお聞きしたところ

「スーパーで売ってる玉子はだめです。殻が薄くて薄皮が剥きにくい。でもうちは田舎なので、自宅のちかくに自宅で鶏を飼っているおうちがあって、そこから購入できるんです。そこの玉子は殻がとても厚くて薄皮も簡単に剥がせます」

と教えてくれました。

私は普段、家で玉子を食べないのですが、今は糖質オフ中。たんぱく質摂取のために久しぶりに玉子を買いました。飼ったのは広島の養鶏農家が飼育する平飼いの鶏の玉子です。

6個で400円程度。

高いと思いますか?

なるほど、ス―パーで山積みになっている玉子はもっと安いですよね。
でも私は6個で400円程度の平飼いの鶏の玉子を選びます。

高いのですが玉子にはこだわりがあります。
この玉子を割ったところ、殻がとても厚くて驚きました。その時にカリカリ梅の話を思い出したのです。

養鶏場の鶏の実態

スーパーで12個150円程度で売られている玉子は非常に殻が薄いことを実感した出来事でした。
ところでスーパーで12個150円程度で売られている安い玉子は養鶏場で鶏が生んだ玉子ですが、この養鶏場がどのような環境にあるかを知っていますか?
コンクリートに覆われた窓のない広い部屋の中に鶏が入ったゲージが積み重ねられています。ゲージは細かく区切られており、その一つ一つのスペースに鶏が同じ向きで並べられています。ゲージは狭く、鶏はその中で向きを変えることも翼を広げることもできません。
ゲージの前(鶏の頭がある方)には餌の箱があり、反対側には鶏が生んだたまごを受け止める溝があります。
鶏は狭いゲージの中で、食べて玉子を生むためだけの機械のように扱われているのです。
こうした養鶏場は、蛍光灯が付いており、消灯されることはありません。24時間明るく蛍光灯が煌々と照らす環境の中で、鶏は今が朝なのか夜なのかもわからず、体内時計が狂ったままで玉子をひたすら生み続けます。通常であれば一日に一つ産むだけですが、養鶏場の鶏は機械のように扱われているので一日に何度も玉子を生みます。玉子を生みすぎて脱腸してしまい、それでも玉子を生む鶏も珍しくないそうです。

この話を聞いたとき、私はあることを思い出しました。
高校生の時に世界史で学んだ、アメリカに連れてこられた黒人の奴隷たちの話です。
彼らはアフリカ大陸で捉えられ、アメリカに向かう船に乗せられます。このとき、一隻の船にできるだけ効率よくたくさんの奴隷を乗せるために、アメリカ人たちは船の中を細かく仕切ることを考えました。人がひとり入れるくらいの棺桶型の仕切りを船の中にみっちりと作ります。その中に奴隷たちを入れます。船の中で奴隷たちは狭いスペースに入れられて身動きをすることができません。彼らには頭の側から食事を与えていたという話です。

もし現代社会でこれを行ったら、非人道的である、拷問だと大問題になりますが、同じことを鶏にしているんですよね。
そしてマシーンのように鶏が生む玉子は、とても安く流通します。殻の薄い玉子です。

一方、平飼い(床の上を自由に鶏が歩き回れる飼い方。自然に近い)の鶏は無理に玉子を生む必要はありません。そのぶん取れる玉子の数は減りますが、一つ一つがしっかりして、殻の厚い玉子になります。

一消費者として何を選ぶか、どこを応援するか

一般的な養鶏場の話を聞いた時。今から10年ほど前になります。その時から私は出来るだけ平飼いの鶏の玉子を選ぶようにしています。確かに安い玉子の2倍近い値段はしますが、一般的な養鶏場の商品にはお金を出したいと思えないからです。
ささやかですが、平飼いの鶏を飼育する農家さんを応援したいという気持ちと、それから味が全然違います。
平飼いの鶏が生んだ玉子は、本当に味が濃くておいしいのです。私の家で友人を招いて食事会をした時に、平飼いの鶏の玉子を出したことがあります。皆が一様に「なにこの玉子、すごく美味しい!!!」と驚いていました。

自分の大切なお金を使うなら、工業的な方法で大量生産している企業に使うよりも、自然の営みや循環、流れを考えている生産者を応援するために使いたいと思います。
自分の口に入るものを買うのであれば、よほどお金に困っていない限りは安いものではなく、生命力にあふれた安心できるものを買いたいと思います。

平飼いの玉子がなければ、せめて太陽の光と風が入る開放鶏舎で育てられた鶏の玉子を買うようにしています。
こういった玉子が置かれていないスーパーからは自然と足が遠のきます。
平飼いの玉子を取り扱っているスーパーには有機野菜が置いてある確率が高く、ほかの食品も安心して買うことができるからです。

あなたは、次に玉子を買うとき、どんな玉子を選びますか?