鳥インフルエンザはなぜ起こる?

玉子の話に続いて、触れておきたいこの話題。鳥インフルエンザについてです。

時折騒がれ、そのたびに養鶏場の鶏が数万羽単位で「処分」されます。
この鳥インフルエンザについて、気になる話があるのです。

ウチの鶏は絶対にそんな病気にならない

鳥インフルエンザが巷で話題になり出したころ。今から10年以上前です。
当時私の友人の一人に、実家が玉子屋だという人がいました。各地で鳥インフルエンザが起こり、そのたびに鶏が大量に殺されるニュースに

「こわいね。実家、大丈夫?」

と聞いたところ、本人も不安になってお父さんに聞いてみたらしいのです。
するとお父さんの回答は

「ウチの鶏は絶対大丈夫。そんな病気にならない」

という答えだったのだとか。
まさかそんな、それは都合のいい思い込みでは。
そう思うところですが、その「大丈夫」にはちゃんと根拠があったのです。その根拠、なんだと思いますか?

「遺伝子組み換えされた飼料は与えていません」
ではありません(これももちろん大事ですが)
「ビタミンEをたくさん含んだ飼料を与えています」
でもありません(そもそも、それも不自然だと思います)

ストレスが少ない環境で体力がある

理由は、彼の実家の玉子屋さんの鶏は平飼いの鶏だったから、なのです。
広い鶏舎の中を鶏が自由に動き回り、じゅうぶんに運動することができるため、鶏一羽一羽が健康で体力があります。
なにより自由気ままに動き回っているから、ストレスが少ないのです。そのような状況下にいれば「ちょっとした病気にかかっても、すぐに治る。自分で治せる」というワケなのです。
また抵抗力も強いので、一羽が病気になったらあっという間に他の鶏に伝染する、ということも無いそう。
確かに理解できます。
例えば学校や職場でインフルエンザが起こっても、全員が感染するわけではありません。体力がなく、抵抗力が弱い個体から感染します。一方ストレスも少なくていつも元気はつらつとしている個体は、感染しないでしょう。

考え方をもう少し発展させてみましょう。
狭い空間に閉じ込められ、外に出ることができません。その空間の中で自由に身体を動かすこともできません。その中で死ぬまで昼夜関係なしに働かされます。食事は口元に自動で運ばれます。
そんな状況にもし自分が置かれたら?
絶望して「死んだほうがまし」「はやくこの状況を(今の生を)終わらせたい)」と願うのではないでしょうか。
そんな状況で一人が伝染病になったら。伝染病でなく、もっと単純な小さな病気でも良いです。あっという間に周囲に感染して、死に至るでしょう。
だって「生きていきたい」と思える要素が、その生活の中にはまるでないのですから。

値段とその裏側にあるもの

話を鶏に戻します。
鳥インフルエンザが発生して大量に処分される鳥がいる養鶏場の玉子は、確かに効率よく産ませることができ、集めることができます。当然ながらその玉子はコストが少ないので安い値段で流通させることが可能です。
一方、平飼いなど生き物本来の生態に近い形で飼育して玉子を集めようとすると、広い面積も必要だし手間もかかります。その分、玉子ひとつひとつの値段は高くなります。

けれど裏側にあるものを考えると、どうしても……。
全ての養鶏場が、せめて蛍光灯のない、そして大きくて広い窓のある養鶏場に変わらないだろうか、と願ってしまいます。
できれば、平飼いで。ゲージの中にとじこめずに、鶏が自由に動き回れる環境を作ってあげられないのだろうか、と。
玉子の値段、もう少しくらい高くても良いと思いませんか?
そして、鶏に優しい自然な方法で飼育している玉子屋さんを、応援してあげようとは思いませんか。
私たちが払うお金は、わずかであっても経済の流れをつくっています。「これは違うだろう、この方法は間違っているだろう」と思うところへお金を落とさなければ、その業者やその方法は淘汰されていきます。
それを忘れずに買い物をしないと、本当の意味で良い世の中にはならないのではないかと思います。ただ与えられるものを買うのではなく、自分の頭で考えて取捨選択をしましょう。
与えられているものを何も考えずに「安いから」という理由だけで選ぶのは、閉鎖された養鶏場の鶏と、変わらないのではないでしょうか。